冬場のお花が少ない時に目を引く南天の赤い実。
お正月に南天の存在を認識した方も多いでしょう。
南天=冬場の赤い実=お正月の縁起もの
そう頭に刷り込まれていました。
街中の軒先で見かける鮮やかな赤い実。
「あ、南天だ!」と自信を持って言ったのです。
そばに居たガーデニングの先輩は、すかさず修正してくれました。

これは万両(まんりょう)よ。
南天(ナンテン)と一緒で縁起物の植物ね。
千両も(センリョウ)もあるけど知ってる?

他にもよく似た縁起物の植物があるんですね。
千両や万両は南天と同じく、お正月の生け花や寄せ植えにされています。
この記事では、見た目も名前も似ている植物千両(センリョウ)と万両(マンリョウ)の見分け方、
似ている植物の南天(ナンテン)との違いを、お花初心者さんにもわかりやすくご紹介していきます。
◆千両・万両・南天の違いと見分け方◆
- 千両(センリョウ)の実:葉の上にまとまって
- 万両(マンリョウ)の実:葉の下で鈴なり
- 南天(ナンテン)の実:ぶどうの房のよう?
(千両)センリョウは葉の上に赤い実がつく
千両と万両が仲良く隣り合って植えられていました。
千両にはまだあまり実がついていませんでした。
教えてもらわないと気づかなかったですね。
こちらが千両、まだ実は数個です。
撮影者:スミレ
センリョウ科/センリョウ属
千両(センリョウ)
千両の原産地は日本を含む東アジアの温かい地方です。
比較的簡単に、挿し木や種から生長させることで増やすことができます。
千両は光沢のある葉が特徴です。

葉っぱがは厚くて
ギザギサしていますね。

ギザギザの切れこみを鋸歯(キョシ)と言うよ。
千両の主な鑑賞対象は赤い珊瑚のような実。
6月頃に小さな黄色い花が咲きます。
花の後に小さな赤い実ができるんですね。
千両の赤い実が見られるのは晩秋~冬の間です。
黄色に熟す「黄実千両(キミノセンリョウ)」という品種もあります。
千両は暖地生まれなので、意外に寒さは苦手です。
冷たい風に当たるとすぐに葉っぱが弱るという特徴を持っています。
● 千両(センリョウ)は葉の上に実がつく
葉っぱの上にまとめて実が付くので華やかですね。

千両はお正月の生け花に最適です。
万両(マンリョウ)は葉の下に垂れ下がる
万両と千両は同じ頃、11~1月が鑑賞時期です。
名前も似ているので間違えやすいのですね。
こちらは万両。
撮影者:スミレ
サクラソウ科/ヤブコウジ属
万両(マンリョウ)
万両の葉は千両よりやや大きいです。
7月頃に白い花をつけます。
花の後に青い実ができ、冬になると真赤になります。
千両よりもちょっと大きな実です。
翌年の5月頃まで実がついているんですよ。
千両と万両の見分け方でわかりやすいのは実のつき方です。
● 万両(マンリョウ)は大きな葉の下に鈴なり
サクランボみたいに可愛いですよね。
撮影者:スミレ
万両(マンリョウ)は葉の下に垂れ下がる様に実がつきます。
また、千両よりもいっぱい実がつきます。
豊作のイメージですよね。
「万両」の名をつけて正月の縁起物として売られたのが始めだそうです。
黄色の実の「キミノマンリョウ」、白い実の「シロミノマンリョウ」
などの品種も栽培されています。
お正月の花あしらいに、万両の鉢植えは人気ですよ。
<ちょっと耳より情報>
その他の縁起もの植物をご紹介致しましょう。
似ている呼び名を持つ「一両」・「十両」・「百両」があります。

一両はアリドオシ、十両はヤブコウジ、
百両はカラタチバナの別名を持っているよ。
これで、よくある縁起もの植物、一、十、百、千、万とそろい踏みです。

万両が一番上ですか?
「億両(オクリョウ)」の別名を持つ「深山樒(ミヤマシキミ)」です。
「億両」は夏に小さな花を咲かせ、冬には鮮やかな赤い実をつける樹木です。
山歩きで見つけることができます。
葉や実にアルカロイドがあるので眺めるだけにしておきましょう。
南天(ナンテン)の実はぶどうの様に垂れ下がる?
撮影者:スミレ
メギ科/ナンテン属
南天(ナンテン)
千両と万両の違いは実の付き方でわかりました。
では昔から知っている南天の実の付き方は?

ぶどうの房が垂れ下がっているイメージでした。
写真の南天も確かにぶどうの房の様にも見えますよね。
ところが・・・

それは重くなってきたから。
実が少ない時は垂れ下がっていないよ。
と言われてしまいました。
それでは南天を千両・万両と見分けるポイントは?
● 南天の木は2~3mと背が高い
南天の木は高いので、低木の千両・万両とは簡単に見分けがつきます。
近年のお庭事情からでしょうか。
最近では、成長が遅くてあまり背が高くない品種も植栽されています。

背が高くならないのは
オタフクナンテンという品種です。
南天は薬用植物
南天の花
南天も実が目立つ植物ですが実があるなら花もあるはず。
南天の花を見たことがありますか?
南天は初夏に小さな白い花がつきます。
花の直径は7ミリ程度。
たくさんの花びらは開花するとすぐに落ちてしまいます。
残るのは内側の6枚だけ。
気をつけていないと見過ごしてしまいますね。

冬場の観賞用と思い込んでいました。
初夏の花も観察してみます!
南天の実は最初は青く、寒さが増すにつれて真赤に色づいていきます。
南天の赤い実を乾燥させたものは薬用として咳止めに使われていました。
葉っぱにも殺菌効果があります。
南天の中国名と和名の由来
撮影者:スミレ
南天の紅葉
南天の名前の由来は「難を転じる」から「南天」。
この由来は有名だから皆さんもご存知ですよね。
中国では南天にふたつの名前がありました。
- 赤い実を灯りに見立てた「南天燭」
- 茎が竹に似ているので「南天竹」
共通する漢字を取って和名の「南天」としたのです。
南天は縁起の良い樹とされており、街や公園の冬場の彩りに大活躍。
中国では南天を「聖竹」と呼んでお正月に飾りました。
日本でもこの風習を受け継いだようです。

無病息災を願って
南天のお箸もありますね。

南天はお正月の門松や
福寿草とセットで床飾りにも。
千両・万両の見分け方と南天との比較まとめ
撮影者:スミレ
南天には青空が似合う
冬に緑の葉っぱと赤い実で目立つ南天・千両・万両。
お正月の準備には欠かせない、縁起物の植物です。
この記事では、見た目も名前も似ている植物、千両(センリョウ)と万両(マンリョウ)の見分け方、
あわせて似ている樹木の南天(ナンテン)との違いを、お花初心者の方にもわかりやすくご紹介致しました。
★ 千両・万両・南天の違いと見分け方 | |||
花名 | 千両 (1月3日誕生花) ![]() | 万両 (1月23日誕生花) ![]() | 南天 (12月5日誕生花) ![]() |
科名 /属名 | センリョウ科 センリョウ属 | サクラソウ科 ヤブコウジ属 | メギ科 ナンテン属 |
原産 | 日本・東アジア | 日本・東南アジア | |
学名 | Sarcandra glabra | Ardisia crenata | Nandina domestica |
別名 | ・センリョウカ (仙蓼花) ・クササンゴ (草珊瑚) ・センレイソウ (仙露草) | ・コウジ ・橘(タチバナ) ・藪橘 (ヤブタチバナ) | ・南天燭 ・南天竹 ・成天(ナルテン) ・Heavenly bamboo |
鑑賞 時期 | 11~1月 (6月小さな黄緑の花) | 11~1月 (7月小さな黄の花) | 11~2月 (6月小さな白い花) |
特徴 | ・葉の上に実がつく ・実が万両より少ない ・光沢ある緑の葉 ・樹高約80センチ以下 ・お正月の生け花に | ・葉の下に実がつく ・実が千両より多い ・さくらんぼのよう ・樹高約1m ・お正月の鉢植えに | ・枝の先に実がなる ・ぶどうの房のよう ・樹高2~3m ・お正月の門松 ・福寿草と合わせて床飾りに |
花言葉 | 「可憐」 「富」 | 「寿ぎ」 「陰徳」 | 「幸せ」 「良い家庭」 |
晩秋から冬を彩る貴重なお花や樹木。
他にも見分けにくい植物がありますよね。
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